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この記事は企業の採用担当者向けに、「給与テーブルの作り方」について、まとめています。給与テーブルを明確化することで、社内の不公平感を解消し、納得度の高い報酬制度を構築することができます。
給与の不公平感が生まれる原因
多くの企業で人材の不満が起きる要因として、「待遇の不公平さ」「人材間の嫉妬の感情」などがあります。
特に多いのが、中途採用時の給与決定における不公平感です。
年収の高い業界や経験を持った方を中途採用する際に、前職の年収をベースに基本給を決めてしまうケースがよくあります。その結果、もとからいた社員よりも高い給与水準となり、不公平感が生まれます。
具体例
- 既存社員Aさん:勤続5年、年収400万円
- 中途採用Bさん:入社1年目、前職年収500万円をベースに年収480万円で採用
このような状況が生まれると、既存社員から「なぜ後から入った人の方が給与が高いのか」という不満が出ます。Bさん本人も、既存社員との関係性に気を使い、働きづらさを感じることがあります。
ルール化されていない給与決定の問題
給与の決め方をルール化していない企業も多く、その場その場での判断を行っていった結果、各個人を尊重して決めた内容が、いつの間にか歪な状態になってしまうケースが多くあります。
よくあるパターン
- 採用が難しい時期に入社した人材には、高めの給与を提示
- 採用が容易な時期に入社した人材には、低めの給与を提示
- 交渉力のある候補者には、高めの給与を提示
- 交渉をしなかった候補者には、低めの給与を提示
このように、入社のタイミングや交渉力によって給与が決まってしまうと、同じ職種・同じ経験年数でも給与に大きな差が生まれ、不公平感が蓄積していきます。
給与公開の是非
給与の不公平感を解消する方法として、一部の企業では給与を全公開するという透明性をアピールしているケースもあります。
給与を全公開することで、「誰がいくらもらっているか」が明確になり、不公平感は減る可能性があります。また、「頑張れば給与が上がる」という仕組みが見えることで、モチベーション向上につながることもあります。
給与公開のメリット
- 透明性が高まり、不公平感が減る
- 給与の決定ルールが明確になる
- 競争環境が生まれ、パフォーマンス向上につながる
給与公開のデメリット
- お金のことを明かしたくないという人材もいる
- 人材が、プレッシャーやストレスを感じる
- 給与だけで評価されているように感じ、やりがいを失う可能性がある
このように、給与公開には賛否両論があります。重要なのは、自社のカルチャーに合った人事制度を運用していくことです。
給与を全公開するかどうかに関わらず、給与の決定ルールを明確にし、社員が納得できる仕組みを作ることが重要です。
給与テーブルとは何か
給与の不公平感を解消する考え方として、給与テーブルの明確化があります。
給与テーブルとは、職種・経験年数・役職などに応じて、給与の基準を定めた表のことです。多くの企業で用いられている仕組みですが、その設計方法について解説します。
給与テーブルを作成することで、以下のメリットがあります。
- 給与の決定ルールが明確になり、不公平感が減る
- 中途採用時に、適切な給与水準を判断しやすくなる
- 昇給や昇格の基準が明確になり、社員のモチベーション向上につながる
- 人件費の予測が立てやすくなり、経営計画に組み込みやすい
給与テーブルの作り方
給与テーブルを作成する手順を、ステップごとに解説します。
ステップ1:時給換算で現状を把握する
まず、すべての人材の給与を「時給水準」で割り出します。
なぜ時給換算するのかというと、残業時間の違いによって、見かけ上の月給が変わってしまうためです。時給換算することで、純粋な「労働時間あたりの報酬」を比較できます。
計算方法
基本的な計算式は以下の通りです。
時給 = 月給 ÷ (基本労働時間 + 残業時間 × 1.25)
残業時間は通常1.25倍の賃金となります(深夜はさらに倍率が変わります)。
具体例
例えば、以下の2人の社員がいたとします。
- Aさん:月給25万円、160時間勤務、残業なし
- Bさん:月給35万円、160時間勤務、残業30時間
それぞれの時給を計算すると:
- Aさん:25万円 ÷ 160時間 = 1,562円
- Bさん:35万円 ÷ (160時間 + 30時間 × 1.25) = 35万円 ÷ 197.5時間 = 1,772円
見かけ上の月給では10万円の差がありますが、時給換算では約210円、比率にして約12%の違いになります。
全社員の時給分布を作成する
全社員の時給を計算し、分布を作成します。これにより、以下のことがわかります。
- 会社の基本的な時給水準
- 職種や役職による時給の違い
- 不公平な給与設定になっている人材の有無
この分布を、期待する業務や業績の重要度と照らし合わせて、適切かどうかを判断します。
ステップ2:職種別の手当設計
次に、職種に合わせた適切な残業見込みや手当などを設定します。
職種によって、残業の発生頻度や働き方が異なるため、それに応じた手当を設計することが重要です。
営業職の例
顧客の状況に合わせて即時の対応が必要な営業職の場合、残業が発生しやすい傾向があります。そのため、みなし残業代を30〜40時間設定し、手当として支給します。
例:
- 基本給:25万円
- みなし残業代(30時間分):6万円
- 月給合計:31万円
このように設定することで、実際に残業が発生しても、毎月の給与が大きく変動しないようにできます。
スタッフ職の例
決算期などの繁忙期以外は、基本的に残業がないスタッフ職の場合は、みなし残業代は用いず、定時で業務を完遂してもらうように設計します。
例:
- 基本給:22万円
- みなし残業代:なし
- 月給合計:22万円
残業が発生した場合は、その都度残業代として支給します。
手当の種類
職種や役割に応じて、以下のような手当を設計します。
- みなし残業代(固定残業代)
- 営業手当
- 役職手当
- 資格手当
- 職務手当(専門性の高い業務を担当する場合)
ステップ3:市場水準に応じた基準時給の設定
基本的な時給の考え方も、市場の採用難易度に合わせて設定します。
採用難易度が高い職種
一般に、営業職など目標・ノルマなどのプレッシャーや顧客対応力が求められる職種は希望者が少なく、市場の給与基準が高くなることが多くあります。
また、法律や資格、エンジニアなど専門的な経験を持つ人も貴重で、給与テーブル自体を引き上げたり、資格手当・職務手当などを設計して市場の採用基準に合わせる形を取ります。
具体例
同じ勤続年数でも、職種によって基準時給を変える設計例:
- 一般事務職:基準時給1,400円
- 営業職:基準時給1,600円(営業手当含む)
- エンジニア職:基準時給1,800円(職務手当含む)
このように、市場の採用難易度や専門性に応じて、基準時給を設定します。
ステップ4:経験年数・パフォーマンスに応じた階段設計
基準時給を設定したら、経験年数やパフォーマンスに応じた階段を作っていきます。
階段設計の例
営業職の場合:
- 1年目:基準時給1,400円
- 2〜4年目:基準時給1,600円
- マネージャー昇進後:基準時給1,800円
エンジニア職の場合:
- 1年目:基準時給1,600円
- 2〜4年目:基準時給1,800円
- リードエンジニア昇進後:基準時給2,000円
このように、経験年数や役職に応じて、明確な階段を設けることで、「どうすれば給与が上がるのか」が見えるようになります。
パフォーマンスによる調整
同じ経験年数でも、パフォーマンスによって時給を調整する仕組みを作ることもできます。
例:
- 2〜4年目の基準時給:1,600円〜1,800円の幅を設ける
- 評価に応じて、その幅の中で決定する
これにより、頑張った人が報われる仕組みを作ることができます。
ステップ5:賞与の分配ルール
賞与(ボーナス)の分配方法も、給与テーブルと合わせて設計します。
基本給に比例して分配する仕組み
賞与を各個人の基本給に比例して分配する仕組みが、最も一般的です。
例:
- 基本給25万円の社員:賞与50万円(基本給の2ヶ月分)
- 基本給30万円の社員:賞与60万円(基本給の2ヶ月分)
この仕組みの利点は、普段の給与が高い人材には賞与も多く支給されるため、納得感が高いことです。
完全に同額を配分する仕組み
一方、賞与を全社員に完全に同額で配分する仕組みもあります。
この考え方は、前澤氏が経営していた頃のZOZO社で有名な仕組みとして紹介されています。全社員が同じ額の賞与をもらうことで、チーム全体で成果を出そうという意識が生まれます。
どちらを選ぶべきか
どちらの仕組みが良いかは、会社の文化や価値観によります。
- 個人のパフォーマンスを重視する文化:基本給に比例した賞与
- チーム全体の成果を重視する文化:同額の賞与
自社の文化に合った仕組みを選ぶことが重要です。
給与テーブルからはみ出る場合の対処法
給与テーブルを設計しても、実際に良い候補者を採用したい場面では、どうしても既存の基準からはみ出てしまうことがあります。
例えば、前職で600万円もらっていた優秀な候補者を採用したいが、自社の給与テーブルでは500万円が上限、といったケースです。
このような場合、以下の方法で対処できます。
方法1:給与テーブルと将来像を伝える
給与テーブルの設計を候補者に伝えたうえで、将来的に社内の信頼や実績を得て昇進をもとに期待する年収帯の支給が可能なことを伝えます。
例: 「現在の給与テーブルでは、入社時は500万円となりますが、マネージャーに昇進すれば600万円、部長に昇進すれば700万円が可能です。あなたの経験とスキルであれば、2年以内にマネージャー昇進は十分可能だと考えています」
このように、将来のキャリアパスと給与の見通しを明確に伝えることで、候補者の納得を得られる可能性があります。
方法2:サインアップボーナスの活用
サインアップボーナス(転職初年度の賞与時に一時的なボーナスを上乗せする)という仕組みを用いて、昇進・昇格までの時間の猶予を作り、年収維持以上での転職を実現する方法があります。
例:
- 入社時の基本給:月40万円(年収480万円)
- 賞与(通常):年2回、計100万円
- サインアップボーナス:初年度のみ50万円を上乗せ
- 初年度の年収:480万円 + 100万円 + 50万円 = 630万円
このように、初年度のみ特別なボーナスを支給することで、前職の年収を維持しつつ、2年目以降は通常の給与テーブルに沿った運用ができます。
サインアップボーナスのメリット
- 既存社員との給与バランスを崩さずに、優秀な人材を採用できる
- 候補者にとっても、年収ダウンせずに転職できる
- 2年目以降は、実績に応じて昇進・昇格で給与を上げていける
注意点
サインアップボーナスを活用する際は、既存社員に対して「なぜ新入社員だけボーナスが多いのか」という疑問を持たれないよう、適切に説明する必要があります。
「前職の年収を考慮した一時的な措置である」「2年目以降は通常の給与テーブルに沿った運用となる」ことを明確に伝えることが重要です。
納得度と公平感が組織を強くする
会社のメンバーのことを考えて報酬を提供していても、いつの間にか不公平や不満が溜まってしまうのは、経営者・人事の立場では非常に悲しい結果となってしまいます。
重要なのは、純粋な金額だけではなく、「納得度・公平感」を持って自分の頑張りを報酬に反映してもらえるという仕組みを作り上げることです。
給与テーブルを明確化することで、以下のメリットが得られます。
社員にとってのメリット
- 給与の決定ルールが明確で、納得感が高まる
- 「どうすれば給与が上がるのか」が見えるため、目標を持ちやすい
- 不公平感が減り、同僚との良好な関係を築ける
- この会社で働く安心感が醸成され、定着率が向上する
会社にとってのメリット
- 採用時の給与交渉がスムーズになる
- 人件費の予測が立てやすく、経営計画に組み込みやすい
- 不公平感が減ることで、パフォーマンス向上が期待できる
- 社員の定着率が向上し、採用コストを削減できる
給与テーブルの作成は、一度作って終わりではありません。市場の給与水準や、会社の成長に合わせて、定期的に見直しを行うことが重要です。
タレントグローススタジオのサポート
タレントグローススタジオでは、「キャリアを、翻訳する。」というテーマで人材サービスを行っています。
企業向けには、給与テーブルの設計支援や、人事制度の構築サポートも行っています。
支援内容の例
- 現状の給与分布の分析(時給換算による公平性チェック)
- 市場水準に基づいた給与テーブルの設計
- 職種別の手当設計
- 賞与の分配ルールの設計
- サインアップボーナスなどの特別施策の提案
給与テーブルを通じて、納得度と公平感の高い人事制度を構築しますので、お気軽にご相談ください。
タレントグローススタジオを運営する、つなぐスタジオ株式会社では「ビジネス知の機会格差をなくす」というミッションに向けて、これからも実践的で価値ある情報を発信していきます。この記事の内容や、その他採用・人材に関して気になる点がありましたら、お気軽にご相談ください。

執筆者 : 佐久間 一己(さくま かずき)
つなぐスタジオ株式会社 代表取締役社長 / ローカル&タレントグローススタジオ Director
リクルート営業マネージャー、ユーザベースFORCAS(現Speeda)カスタマーサクセスマネージャー、スタートアップ役員、地方起業を経て、地方企業向けのマーケティング代理店と採用・キャリア支援事業を設立。人材紹介免許を取得。自身が地方からスタートアップへの転職を経験し、職種の理解や業界の知識を学んだ経験から、双方の立場がわかる存在としてキャリアの支援を行います。また、事業責任者・執行役員の立場で組織運営を行い、ブランドが乏しい中での採用活動の経験をもとに、地方企業・スタートアップ企業の採用支援に伴走します。


