タレントグローススタジオは「キャリアを、翻訳する。」というテーマで、想いが伝わるキャリア支援の人材サービスを行っています。スタートアップ企業や地方企業の想いが伝わる採用活動を支援いたします。採用企業向けに「事業戦略から相談できる人材エージェント」を目指して、事業計画の高い理解度から必要なポジションの提案・人材の提案を行っています。
採用企業向けコラムでは、経営者・採用人事・事業責任者向けに、人材採用活動に向けた情報を無料で発信し、企業の事業成長とそれにつながる採用の成功を支援いたします。
この記事は企業の採用担当者向けに、「スタートアップが、地方人材を受け入れるために取り組むこと」について、まとめています。
スタートアップが地方人材採用を検討する背景
スタートアップ企業が地方人材の受け入れを検討するタイミングは、期待する成長スピードに到達するために多くの人材が必要となり、より幅広い人材の母集団を形成していく必要性が生まれた時期であることが多いと言われています。
都市部のスタートアップ経験者だけを採用していては、採用人数の拡大が難しい場合があります。そこで、地方企業で経験を積んだ人材や、他業種からの転職者にも門戸を広げることで、採用の幅を広げることができます。
ただし、地方企業や他業種からの転職では、スタートアップ業界で当たり前となっている情報や価値観が浸透していないことが多く、自分の経験を応用して活躍していくまでに少し時間や準備が必要な場合があります。
この記事では、スタートアップが地方人材を受け入れる際に、どのような準備をしていくとよいかについてまとめていきます。
募集前の準備:未経験枠・チャレンジ枠の求人をつくる
採用人数の拡大を目指す際には、幅広い層からの応募を募る必要があります。その際に有効なのは、既存の求人票の「チャレンジ枠・未経験枠」を作成することです。
チャレンジ枠・未経験枠の求人の特徴
会社や事業の説明はそのまま行いながら、以下の要素を充実させます。
業務内容について:
- 未経験の方は何から始めてもらうのか
- どのような研修体制を持っているか
- 先輩社員のキャリアパス事例
必須要件と歓迎要件のバランス:
- その職種の経験年数などは歓迎要件に移行する
- 新しくチャレンジする際の素直さや熱意を重視した内容にする
報酬について:
- 経験枠ではない分、多少下がった報酬レンジになることが多い
- どのような経験や実績を積めば、昇進や昇給があるのかを参考例として記載
- 未来への安心感を持ってもらう
このように求人票の幅広い出し分けを行うことで、より多くの候補者にリーチすることができます。
募集前の準備:職種の説明や業界用語を丁寧に解説する
業界や職種によっては、専門性を判断する方法として、専門用語や専門ツールの利用経験などを求人票に記載する場合があります。正しい専門性を持った人の応募を集めていくためには正しい方法ですが、チャレンジ枠・未経験枠の方にとっては応募を躊躇する要素になりかねません。
専門用語への対応
いざ入社をして仕事を始める上では、業界用語の理解やツールの活用は必須のものとなります。そのため、説明を抜くのではなく、注釈として解説を入れるようにしましょう。
解説の方法:
- 求人票上に注釈を入れる
- カルチャーデックや会社説明資料の中で用語の解説ページを入れる
- カジュアル面談などの際に不安点を払拭できるような仕組みをつくる
例えば、「SaaS事業の経験」と記載する場合、「SaaS(Software as a Service:ソフトウェアをインターネット経由で提供するビジネスモデル)とは、〜〜といったサービスの種類になります。」といった形で注釈を入れることで、未経験者にも理解しやすくなります。
もし求人票上で全てを書くことが難しい場合は、カルチャーデックや会社説明資料の中で用語解説のページを設けることが有効です。
選考中:言葉の定義をすり合わせる
選考中では、相手の言葉の定義と自社で使っている言葉の定義が違う場合があることを認識し、相互に理解ができるようすり合わせを行っていくことが重要です。
営業経験を例にした言葉の定義の違い
例えば、求職者が営業経験をアピールしていたとしても、実際の経験内容は様々です。
営業経験の中身の違い:
- 新規開拓に強く、インサイドセールスやフィールドセールスに適性がある
- 既存顧客との関係性づくりが強く、カスタマーサクセスに適性がある
商材による違い:
- 仕様が固まった商材を高効率で売っていくことが得意
- 課題を引き出し見積もり金額を上げ、高単価で受注をすることが得意
同じ「営業経験」という言葉でも、意味が全く違う場合があります。こういった経験の違いを、言葉の整理をして分解し、適性を判断していくことが重要です。
選考中:柔軟なポジション配置を検討する
選考を進めていく中で、現在選考しているポジションだけではなく、別部署の空きポジションの方が個人の志向や適性と合っているのではないか、という柔軟な考え方をすることが重要です。
全体最適を意識した採用活動
採用は自部署の採用だけを意識して動くのではなく、会社全体の必要ポジションを理解しながら全体最適を高めていくことが重要です。
例えば、マーケティング部門の求人に応募してきた候補者が、面接を通じて話を聞いてみると、実はカスタマーサクセス部門の方が適性が高いと判断されることもあります。その場合、別部門の責任者とも連携し、候補者にとって最適なポジションを提案することで、採用成功率を高めることができます。
こういった全体像を選考者が理解するために、採用の定例ミーティングを週次で運営している企業が多くあります。定例ミーティングでは、各部門の採用状況や候補者の進捗を共有し、柔軟なポジション配置の可能性を議論します。
選考中:ビジョンやカルチャーフィットを重視する
地方人材を採用する場合、多くは経験分野が違う採用を行うことになり、即戦力としてのスキルフィットには数ヶ月から年単位で時間を要する場合があります。
その場合、重要になってくるのは、その候補者が素直に前向きに業務に取り組んでもらえるか、すぐに結果が出なくても掲げるビジョンに共感し学ぶ姿勢を持ち続けてもらえるか、ということです。
ビジョン・カルチャーフィットの確認ポイント
- その方の個人の未来のビジョンを確認する
- 熱意を持って取り組める領域を確認する
- 自社のビジョンとのマッチ率を確認する
- 新しいことを学ぶ姿勢や素直さを確認する
これらの観点で候補者を評価することで、中長期的に活躍する人材を採用することができます。スキルは入社後に習得できますが、ビジョンへの共感や学ぶ姿勢は、入社前から持っているものです。
入社後:オンボーディングを設計する
採用拡大を検討している組織の場合、多くはオンボーディング担当やメンター制度など、受け入れ態勢の整備を進めていると思います。
一般的なオンボーディングの内容
- セキュリティやルールの研修
- 会社全体の説明
- 事業の説明
- 具体的な業務の説明
これらは数日から数週間の計画を立てている企業も多くあります。
地方人材向けの追加要素
これらの準備に加え、選考中のポイントであった、業界用語の説明や専門ツールの解説など、もう一度正しく理解してもらうための時間を取っておくと良いでしょう。
実際に私もユーザベース社に地方から転職し、オンボーディングによって最初の理解のスピードを上げることができました。SaaSという言葉をぼんやり知っていても、IaaSやPaaSなど階層的な説明や代表的なサービスを学ぶことで、事業・業務の理解度を高めることができました。
効果的なオンボーディングの例
- 業界用語の体系的な説明
- 競合他社やビジネスモデルの解説
- 使用するツールのハンズオン研修
- 事業数値の見方や重要KPIの説明
- 先輩社員とのランチミーティング
これらを計画的に実施することで、地方人材がスタートアップの文化や業務に早く適応できるようになります。
入社後:自己開示、相互理解の場や時間を大事にする
特に未経験やチャレンジ枠からの入社の方は、企業文化の違いに戸惑いを感じることも少なくありません。
その際に、働くメンバーとの自己開示や相互理解の場を丁寧に設計し、相手が何を考えているのだろう、どんな受け止め方をするのだろう、何に喜び何に悲しむのだろう、ということを想像しやすい状態を早く作り上げることが重要です。
これにより、所属や承認の欲求が満たされやすくなり、集中して業務に取り組むことができるようになると言われています。
自己開示・相互理解の場の例
- ウェルカムランチ:チームメンバーとのカジュアルな食事
- 1on1ミーティング:上司やメンターとの定期的な対話
- チームビルディング:チーム全体での自己紹介やアイスブレイク
- 社内SNS:Slackなどでの自己紹介投稿
- オフサイトミーティング:業務外での交流機会
特に重要なのは、入社初日から最初の1ヶ月間に、できるだけ多くのメンバーと話す機会を設けることです。業務を教えるだけでなく、「なぜこの会社に入ったのか」「どんな仕事が好きか」「どんな価値観を大切にしているか」といった個人的な話をすることで、相互理解が深まります。
幅広い人材の採用が成長を加速させる
スタートアップが地方人材を受け入れることは、採用の幅を広げるだけでなく、組織の多様性を高め、新しい視点やアイディアを取り入れる機会にもなります。
ただし、そのためには適切な準備が必要です。募集前に求人票を工夫し、選考中に言葉の定義をすり合わせ、入社後にオンボーディングと相互理解の場を設けることで、地方人材がスタートアップで活躍できる環境を整えることができます。
受け入れ準備のチェックリスト
募集前:
- チャレンジ枠・未経験枠の求人を作成したか
- 業界用語や職種の説明を丁寧に記載したか
- 昇進・昇給の道筋を示せているか
選考中:
- 言葉の定義のすり合わせができているか
- 柔軟なポジション配置を検討しているか
- ビジョン・カルチャーフィットを重視しているか
入社後:
- オンボーディングプログラムが整備されているか
- 業界知識や専門用語の研修があるか
- 自己開示・相互理解の場が設計されているか
これらの準備を段階的に進めることで、地方人材がスムーズにスタートアップの環境に適応し、早期から活躍できる可能性が高まります。採用の幅を広げることは、企業の成長スピードを加速させる重要な戦略の一つです。
タレントグローススタジオを運営する、つなぐスタジオ株式会社では「ビジネス知の機会格差をなくす」というミッションに向けて、これからも実践的で価値ある情報を発信していきます。この記事の内容や、その他採用・人材に関して気になる点がありましたら、お気軽にご相談ください。

執筆者 : 佐久間 一己(さくま かずき)
つなぐスタジオ株式会社 代表取締役社長 / ローカル&タレントグローススタジオ Director
リクルート営業マネージャー、ユーザベースFORCAS(現Speeda)カスタマーサクセスマネージャー、スタートアップ役員、地方起業を経て、地方企業向けのマーケティング代理店と採用・キャリア支援事業を設立。人材紹介免許を取得。自身が地方からスタートアップへの転職を経験し、職種の理解や業界の知識を学んだ経験から、双方の立場がわかる存在としてキャリアの支援を行います。また、事業責任者・執行役員の立場で組織運営を行い、ブランドが乏しい中での採用活動の経験をもとに、地方企業・スタートアップ企業の採用支援に伴走します。


