タレントグローススタジオは「キャリアを、翻訳する。」というテーマで、想いが伝わるキャリア支援の人材サービスを行っています。スタートアップ企業や地方企業の想いが伝わる採用活動を支援いたします。採用企業向けに「事業戦略から相談できる人材エージェント」を目指して、事業計画の高い理解度から必要なポジションの提案・人材の提案を行っています。
採用企業向けコラムでは、経営者・採用人事・事業責任者向けに、人材採用活動に向けた情報を無料で発信し、企業の事業成長とそれにつながる採用の成功を支援いたします。
この記事は企業の採用担当者向けに、「求人票をKPIから逆算して作成する方法と、次のボトルネック求人を予測して準備する」について、まとめています。
求人票は既存の組織図から作るべきではない
採用活動を始める際、多くの企業は既存の組織や職種の名称をそのまま使って求人票を作成します。「営業が足りない」「技術者を増やしたい」という形で、現在ある職種の人員を増やすという発想です。
しかし、この方法には大きな落とし穴があります。既存の組織や職種の表現が、必ずしも事業成長に必要な人材を正しく示しているとは限らないのです。
よくある失敗例
- 営業を採用したが、売上が伸びなかった
- 技術者を増やしたが、生産性が上がらなかった
- マーケティング担当を採用したが、期待した成果が出なかった
これらの失敗は、「何のために採用するのか」というKPIの視点が抜けていることが原因であることが多いと言われています。
営業採用の失敗例から学ぶ
具体的な例で考えてみましょう。
ある企業が売上拡大を目指して「営業職」の採用を決めました。現在の営業担当の仕事内容を書き出し、「法人営業経験3年以上」という求人票を作成しました。
しかし、採用活動を始める前に、現在の営業の実態を詳しく分析してみると、以下のような状況が見えてきました。
現状の営業の実態
- 既存顧客対応が業務時間の8割を占めている
- 新規受注はウェブサイトからの問い合わせがほとんど
- 電話や訪問での新規開拓の成果はまだ確立していない
- 商談から受注までのプロセスは確立している
この状況で「法人営業経験者」を採用しても、以下のような問題が起きる可能性があります。
採用後に起きること
- ウェブサイトからの問い合わせ数は変わらない
- 既存の営業担当と商談を分け合うだけになる
- 新しい営業手法が確立されず、売上は伸びない
つまり、この企業が本当に必要としているのは「営業職」ではなく、以下のような人材である可能性が高いのです。
本当に必要な人材
- ウェブサイトやSNSでの集客を強化できる人材
- 新規開拓の手法を作り上げられる営業人材
- 新規事業や新しい切り口を開拓できる人材
このように、「営業がほしい」という表面的な要望の裏にある、本当に改善すべきKPIは何なのかを見極めることが重要です。
KPIから逆算した求人設計のプロセス
事業成長に必要な人材を正しく定義するためには、以下のようなプロセスで考えることが推奨されます。
1. 事業目標を明確にする
まず、事業の目標を明確にします。
目標の例:
- 今期の売上を前年比150%にする
- 新規事業の立ち上げを成功させる
- 顧客満足度を向上させ、解約率を半減させる
2. 目標達成に必要なKPIを分解する
事業目標を達成するために、どのKPIを改善する必要があるかを分解します。
売上150%達成の場合:
- 新規顧客数を増やす?
- 既存顧客の単価を上げる?
- リピート率を上げる?
さらに分解:
- 新規顧客数を増やすには?
- 問い合わせ数を増やす
- 商談化率を上げる
- 成約率を上げる
3. 現状のボトルネックを特定する
各KPIの現状を分析し、最もボトルネックになっている部分を特定します。
現状分析の例:
- 問い合わせ数: 月間100件(目標150件)← ボトルネック
- 商談化率: 30%(業界平均並み)
- 成約率: 50%(業界平均以上)
この場合、問い合わせ数がボトルネックであることが分かります。
4. ボトルネックを解消する役割を定義する
ボトルネックを解消するために、どんな役割を持った人材が必要かを定義します。
問い合わせ数を増やすには:
- ウェブサイトやSNSでの情報発信
- 既存顧客からの紹介促進
- 展示会やセミナーでの認知拡大
- 電話での新規開拓
この分析を経て、初めて「ウェブマーケティング担当」や「新規開拓営業担当」という求人を作成することができます。
5. 求人票に落とし込む
役割が明確になったら、求人票に落とし込みます。
求人票に記載すべき内容:
- なぜこのポジションが必要なのか(背景・目的)
- どんなKPIに責任を持ってもらうのか
- 具体的にどんな業務を担当するのか
- どんなスキルや経験が必要か
「営業募集」という漠然とした求人票ではなく、「月間問い合わせ数を150件に増やすためのウェブマーケティング担当」という具体的な求人票になります。
次のボトルネックを予測する
採用活動で重要なのは、1人の採用が成功した後に、次にどこがボトルネックになるかを予測しておくことです。
ボトルネックは移動する
1人の採用ができ、そこでできることが増えると、事業のボトルネックが別のKPIに移ることになります。
ボトルネック移動の例
ステップ1:
- ボトルネック: 商談数が足りない
- 採用: ウェブマーケティング担当
- 結果: 問い合わせ数が増加
ステップ2:
- ボトルネック: 商談を処理する営業人員が足りない
- 採用: 新規営業担当
- 結果: 成約数が増加
ステップ3:
- ボトルネック: 既存顧客対応が追いつかない
- 採用: 既存顧客専任担当
- 結果: 顧客満足度向上、解約率低下
このように、1つのボトルネックを解消すると、次のボトルネックが顕在化します。これを事前に予測しておくことで、計画的な採用活動ができます。
間接部門のボトルネックも考慮する
事業部門のボトルネックだけでなく、間接部門のボトルネックも考慮する必要があります。
採用担当のボトルネック例
現状:
- 年に1〜2人の採用では特に問題なかった
- 経営者や事業責任者が面接を担当
- 人事担当者は1名で、他の業務と兼務
成長フェーズ:
- 今後、年間5名以上の採用を目指す
- 求人票作成、面接調整、候補者対応などのタスクが増大
- 人事担当者が採用業務に追われ、他の業務が回らなくなる
この場合、事業部門の採用を加速させる前に、先に採用担当者を採用することで、年間の採用人数を伸ばすことができるケースがあります。
その他の間接部門のボトルネック
- 経理・財務: 取引先や社員が増えると処理が追いつかない
- 総務・労務: 社員数が増えると手続きや問い合わせ対応が増える
- システム管理: 社員増加でIT環境の整備やサポートが追いつかない
事業成長のスピードに合わせて、間接部門の体制も強化していく必要があります。
採用の順番を戦略的に考える
事業計画と実態を見ながら、どの順番で採用をしていくことが必要なのかを検討します。
採用順番を決める要素
1. 予算
- 採用にかけられる予算はどれくらいか
- 優先順位の高いポジションから採用する
2. 緊急度
- 今すぐ必要なポジションはどれか
- 半年後、1年後に必要になるポジションはどれか
3. 採用難易度
- 採用市場で人材が豊富なポジションか
- 採用に時間がかかるポジションは早めに動く
4. 組織バランス
- 組織全体のバランスを考慮する
- 特定の部門だけが肥大化しないようにする
採用計画の例(年間3〜4名の採用規模)
前期(4月〜9月)
- ウェブマーケティング担当(最優先のボトルネック解消)
- 採用担当(次年度以降の採用加速のため)
後期(10月〜3月)
- 新規営業担当(マーケティング成果を受けて)
- 既存顧客専任担当(顧客満足度向上のため)
次年度計画
- 営業マネージャー(組織化の準備)
- 経理担当(間接部門の強化)
- 技術責任者(製品・サービス改善)
このように、事業のフェーズと予算に応じて、戦略的に採用の順番を決めていきます。年間3〜4名の採用であれば、半期ごとに1〜2名のペースで進めることが現実的です。
柔軟な人材配置と兼務体制
採用計画通りに進まないことも多々あります。そのため、組織のバランスを保つために、柔軟な人材配置や兼務体制を考えておくことも重要です。
柔軟な配置の例
- ウェブマーケティング担当が採用できるまで、営業担当がSNS発信を兼務
- 既存顧客専任担当が採用できるまで、営業が既存顧客対応を継続
- 採用担当が採用できるまで、事業責任者が採用面接を担当
兼務のメリットとデメリット
メリット:
- 採用できるまでの時間を有効活用できる
- 兼務することで、業務の全体像を理解できる
- 専任担当が入った時に、引き継ぎがスムーズ
デメリット:
- 本来の業務に集中できない
- 専門性が低く、成果が出にくい
- 兼務者の負荷が高くなる
兼務はあくまで一時的な対応として、できるだけ早く専任の担当者を採用することが推奨されます。
事業戦略と採用戦略を連動させる
採用は、事業戦略と密接に連動している必要があります。
事業戦略と採用戦略の連動
事業戦略:
- 今期は新規顧客獲得に注力
- 来期は既存顧客の深耕に注力
- 再来期は新規事業の立ち上げ
採用戦略:
- 今期: マーケティング、営業強化
- 来期: 既存顧客対応担当強化
- 再来期: 新規事業責任者、技術責任者
このように、事業のフェーズに応じて、必要な人材が変わってきます。採用担当者や経営者は、常に事業計画を理解し、次に必要になるポジションを予測しておくことが重要です。
定期的な見直し
事業環境は常に変化します。以下のタイミングで、採用計画を見直すことが推奨されます。
- 半期ごとの事業レビュー
- 大きな事業方針の転換があった時
- 想定外の成果(良い/悪い)が出た時
- 採用が計画通りに進まなかった時
柔軟に計画を修正しながら、最適な採用を進めていくことが、組織の成長につながります。
KPI逆算型の採用がもたらす効果
KPIから逆算して求人を設計し、次のボトルネックを予測することで、以下のような効果があると言われています。
採用のミスマッチが減る
- 「何をしてもらいたいか」が明確なため、候補者も理解しやすい
- 入社後のギャップが少ない
採用コストが最適化される
- 本当に必要なポジションに集中できる
- 無駄な採用を減らせる
事業成長が加速する
- ボトルネックが解消され、事業がスムーズに進む
- 次の成長フェーズに向けた準備ができている
組織のバランスが保たれる
- 特定の部門だけが肥大化しない
- 間接部門も含めた全体最適が図れる
採用は、単に人数を増やすことが目的ではありません。事業成長のボトルネックを解消し、次のフェーズに進むための戦略的な投資です。
KPIから逆算した求人設計と、次のボトルネックの予測を通じて、より効果的な採用活動を実現してください。
タレントグローススタジオを運営する、つなぐスタジオ株式会社では「ビジネス知の機会格差をなくす」というミッションに向けて、これからも実践的で価値ある情報を発信していきます。この記事の内容や、その他採用・人材に関して気になる点がありましたら、お気軽にご相談ください。

執筆者 : 佐久間 一己(さくま かずき)
つなぐスタジオ株式会社 代表取締役社長 / ローカル&タレントグローススタジオ Director
リクルート営業マネージャー、ユーザベースFORCAS(現Speeda)カスタマーサクセスマネージャー、スタートアップ役員、地方起業を経て、地方企業向けのマーケティング代理店と採用・キャリア支援事業を設立。人材紹介免許を取得。自身が地方からスタートアップへの転職を経験し、職種の理解や業界の知識を学んだ経験から、双方の立場がわかる存在としてキャリアの支援を行います。また、事業責任者・執行役員の立場で組織運営を行い、ブランドが乏しい中での採用活動の経験をもとに、地方企業・スタートアップ企業の採用支援に伴走します。


