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この記事は企業の採用担当者向けに、「会社説明会の活用」について、まとめています。会社説明会は、候補者との最初の接点を増やし、採用の母集団形成に大きく貢献する手法です。
母集団形成とは何か
採用には「母集団形成」という考え方があります。これは、最終的な採用をするまでの通過率から逆算して、必要な募集の総人数を確保する考え方です。
例えば、以下のような通過率があったとします。
- 応募者100名
- 書類通過30名(通過率30%)
- 一次面接通過10名(通過率33%)
- 二次面接通過5名(通過率50%)
- 内定承諾2名(承諾率40%)
この場合、2名を採用するためには、100名の応募者が必要ということになります。もし3名を採用したいなら、150名の応募者を集める必要があります。
このように、最終的な採用人数から逆算して、どれだけの候補者と接点を持つ必要があるかを考えるのが母集団形成の考え方です。
採用における課題:知名度や報酬の制約
母集団を形成するには、多くの候補者に応募してもらう必要があります。
有名な企業や、高い報酬を条件として出せる企業は、比較的容易に応募を集めることができます。求人を出せば、自然と候補者が集まってくる状態です。
しかし、多くの企業はそうではありません。特に、以下のような制約があります。
既存社員との横並び
新しく採用する人材の給与を高く設定すると、既存社員から「なぜ新入社員の方が給与が高いのか」という不満が出る可能性があります。組織の公平性を保つため、既存社員の給与水準を大きく超える条件を出すことは難しいケースが多いです。
ビジネスモデルで許容できる報酬額
事業の利益率によって、採用にかけられる人件費には上限があります。高い報酬を出せば採用しやすくなりますが、それが事業のコスト構造を圧迫してしまっては本末転倒です。
知名度の低さ
地方企業や、まだ認知度の低いスタートアップは、求人を出しても候補者の目に留まりにくい傾向があります。「知らない会社」には応募を躊躇する候補者も多いです。
このような制約がある中で、どうやって母集団を形成するかが、多くの企業にとっての課題となります。
会社説明会という選択肢
そこで有効な手法が、「会社説明会を実施するので、無料で参加しませんか?」という案内方法です。
なぜ会社説明会が有効なのか
候補者の多くは、「応募する」という行為にハードルを感じています。応募すれば選考が始まり、書類選考や面接を受けなければなりません。特に、よく知らない会社に応募するのは、心理的な抵抗が大きいです。
一方、「会社説明会を聞く」というのは、心理的なハードルが低い行為です。
- 選考ではないので、気軽に参加できる
- まずは話を聞いてから、応募するか判断できる
- 無料で会社のことを知れるなら、行ってみようかな
このように、応募の前段階として、まず会社を知ってもらう機会を提供することで、候補者との接点を増やすことができます。
実体験:リクルート時代の取り組み
私がリクルートの地方グループのマネージャーだった時代には、週に1〜2回の日程を設けて会社説明会を開催していました。
自社の応募媒体や人材エージェントに案内を行い、集まったのが1〜2人という状況でも、説明会を開催していました。少人数でも、直接会って会社のことを説明する機会を大切にしていたのです。
この取り組みを通じて、多くの候補者と出会うことができ、結果として採用につながるケースも多くありました。
支援企業での実績
この手法を用いて、会社説明会資料の作成支援と告知をお手伝いした企業では、実際に「応募の前に会社の概要を聞きたい」という方が増加し、母集団形成に貢献できた実績があります。
特に、知名度が低い企業や、地方の企業では、この手法が非常に効果的です。候補者は「まずは話を聞いてみよう」という気軽な気持ちで参加し、説明会を通じて会社の魅力を知り、応募に至るというケースが多く見られます。
カジュアル面談との違い
会社説明会と似た手法として、カジュアル面談があります。両者の違いを理解しておくことが重要です。
カジュアル面談とは
カジュアル面談は、一次面接前の「0次面談」というもので、選考ではなく、実際の社員や人事の方から会社の説明を受け、雰囲気や会社内容を掴むという目的のものです。
ただし、カジュアル面談では、基本的に説明を受ける場ではあるものの、以下のような質問が候補者に投げかけられることが一般的です。
- 「どのような軸で会社を探しているんですか?」
- 「弊社のカジュアル面談を受けてみようと思った理由はなにですか?」
- 「今後のキャリアで、どんなことを実現したいですか?」
つまり、カジュアル面談では、志望動機まで固くなくても、意向や転職軸について回答が求められます。候補者側も、ある程度の準備をして臨む必要があります。
会社説明会の特徴
一方、会社説明会は、もっとカジュアルで、候補者にとってハードルが低いものです。
- 会社からの一方向的な説明が中心
- 候補者の転職軸や志望動機を深掘りすることはしない
- 質疑応答で疑問を解消してもらうことが目的
候補者は「とりあえず話を聞いてみよう」という軽い気持ちで参加でき、会社側も「まずは自社を知ってもらう」ことに集中できます。
どちらを選ぶべきか
両者を使い分けることで、より多くの候補者と接点を持つことができます。
- 会社説明会:まだ応募意向が固まっていない、自社のことをよく知らない候補者向け
- カジュアル面談:ある程度興味を持ってくれている、転職を具体的に考えている候補者向け
候補者の状況に応じて、適切な接点を提供することが重要です。
会社説明会の具体的な進め方
会社説明会を効果的に実施するためには、以下のような流れで進めることをおすすめします。
1. 説明資料の準備
会社説明会では、カルチャーデック(※別記事「カルチャーデックを作成・公開しよう」参照)などの説明資料をもとに行います。
資料に含めるべき内容:
- 会社概要(設立年、所在地、事業内容の概要)
- ビジョン・ミッション(目指す方向性、大切にしている価値観)
- 事業概要や強み(具体的な事業内容、市場での位置づけ、独自性)
- 実際の働き方(勤務時間、リモートワークの有無、福利厚生)
- チームの雰囲気や環境(メンバー構成、社内の文化、オフィスの様子)
- 選考のプロセス(応募から内定までの流れ、各ステップの内容)
カルチャーデックをすでに作成している場合は、その内容をそのまま会社説明会に応用できます。
2. 開催日程の設定
会社説明会は、定期的に開催することが重要です。
おすすめの頻度:
- 週に1〜2回の日程を設ける
- 平日夜(19時〜20時)や土曜日など、候補者が参加しやすい時間帯を選ぶ
- オンライン開催にすることで、遠方の候補者も参加しやすくする
定期的に開催することで、「いつでも参加できる」という印象を候補者に与えることができます。
3. 告知方法
会社説明会の開催を、以下の方法で告知します。
- 自社の応募媒体:求人サイトや自社の採用ページに、会社説明会の案内を掲載
- 人材エージェント:提携しているエージェントに、候補者への案内を依頼
- SNS:LinkedInやX(旧Twitter)などで、会社説明会の開催を告知
- 社員の紹介:既存社員に、知人で転職を考えている人がいれば紹介してもらう
告知の際は、「選考ではない」「気軽に参加できる」「無料」という点を強調することで、参加のハードルを下げることができます。
4. 説明会の実施
会社説明会は、以下のような流れで進めます。
所要時間:30分〜1時間程度
構成例:
- 自己紹介と会社説明会の趣旨説明(5分)
- 会社概要とビジョン・ミッションの説明(10分)
- 事業内容と強みの説明(10分)
- 働き方や社内文化の説明(10分)
- 選考プロセスの説明(5分)
- 質疑応答(10〜20分)
説明は、一方的に話すのではなく、候補者の反応を見ながら進めることが重要です。興味を持ってもらえているか、疑問が残っていないかを確認しながら、柔軟に対応します。
質疑応答の重要性
会社説明会の最も重要な部分は、質疑応答です。候補者が抱えている疑問や不安を解消することで、応募意向度を高めることができます。
よくある質問例:
- 「未経験でも応募できますか?」
- 「リモートワークはどれくらいの頻度で可能ですか?」
- 「育児との両立は可能ですか?」
- 「選考にはどれくらいの期間がかかりますか?」
こうした質問に丁寧に答えることで、候補者の不安を取り除き、応募へのハードルを下げることができます。
5. 説明会後のフォロー
会社説明会後、候補者の意向に応じて柔軟に対応します。
即時の一次面接
「もっと詳しく話を聞きたい」「早く選考を受けたい」という候補者には、説明会の直後に一次面接の場を提供します。時間を空けずに面接を実施することで、候補者の熱量が高いうちに選考を進めることができます。
例:
- 会社説明会:19時〜19時45分
- 休憩:19時45分〜20時
- 一次面接:20時〜21時
このように、説明会と面接を同日に設定しておくことで、スムーズに選考を進められます。
時間をあけて応募意思を確認
「もう少し考えたい」という候補者には、無理に応募を促さず、時間をあけて応募意思を確認します。
例:
- 説明会の翌日に、お礼のメールを送る
- 「何か不明点があれば、いつでもご連絡ください」と伝える
- 1週間後に、改めて応募意向を確認する連絡をする
焦らず、候補者のペースに合わせることで、信頼関係を築くことができます。
少人数でも開催する価値がある
会社説明会を開催する際、「参加者が少ないと無駄ではないか」と感じるかもしれません。しかし、1〜2人でも開催する価値は十分にあります。
少人数のメリット
- 候補者一人ひとりの疑問に、丁寧に答えることができる
- よりパーソナルなコミュニケーションが取れ、信頼関係を築きやすい
- 候補者の反応を見ながら、説明の仕方を柔軟に調整できる
実際、私がリクルート時代に開催していた説明会も、1〜2人という少人数のことが多くありました。しかし、その少人数の説明会から、多くの採用が生まれました。
大切なのは、参加人数ではなく、一人ひとりの候補者と丁寧に向き合うことです。
会社説明会を習慣化する
会社説明会は、単発で実施するのではなく、習慣化することが重要です。
習慣化のメリット
- 「いつでも参加できる」という安心感を候補者に与えられる
- 定期的に候補者と接点を持つことで、母集団形成が安定する
- 説明会の質が向上し、より効果的な内容にブラッシュアップできる
週に1回、同じ曜日の同じ時間に開催するなど、定期的なスケジュールを組むことで、候補者も参加しやすくなります。
まとめ:「会社説明会を聞く」という選択肢を提供しよう
採用活動において、母集団形成は非常に重要です。しかし、知名度や報酬の制約がある中で、多くの候補者に応募してもらうのは簡単ではありません。
そこで有効なのが、「会社説明会」という選択肢です。
会社説明会は、候補者にとって心理的なハードルが低く、「まずは話を聞いてみよう」という気軽な気持ちで参加できます。説明会を通じて会社のことを知り、魅力を感じてもらうことで、応募へとつなげることができます。
カルチャーデックなどの説明資料を活用し、定期的に会社説明会を開催することで、候補者との接点を増やし、母集団形成を強化していきましょう。
ぜひ、候補者の方に「会社説明会を聞く」という選択肢をご提供してみてください。
タレントグローススタジオのサポート
タレントグローススタジオでは、「キャリアを、翻訳する。」というテーマで人材サービスを行っています。
企業向けには、会社説明会の資料作成支援や、説明会の運営サポートも行っています。
支援内容の例
- 会社説明会用の資料作成(カルチャーデックの作成含む)
- 説明会の構成やトークスクリプトの作成
- 説明会の告知方法のアドバイス
- 説明会後のフォローアップの設計
会社説明会を通じて、効果的な母集団形成を支援しますので、お気軽にご相談ください。
タレントグローススタジオを運営する、つなぐスタジオ株式会社では「ビジネス知の機会格差をなくす」というミッションに向けて、これからも実践的で価値ある情報を発信していきます。この記事の内容や、その他採用・人材に関して気になる点がありましたら、お気軽にご相談ください。

執筆者 : 佐久間 一己(さくま かずき)
つなぐスタジオ株式会社 代表取締役社長 / ローカル&タレントグローススタジオ Director
リクルート営業マネージャー、ユーザベースFORCAS(現Speeda)カスタマーサクセスマネージャー、スタートアップ役員、地方起業を経て、地方企業向けのマーケティング代理店と採用・キャリア支援事業を設立。人材紹介免許を取得。自身が地方からスタートアップへの転職を経験し、職種の理解や業界の知識を学んだ経験から、双方の立場がわかる存在としてキャリアの支援を行います。また、事業責任者・執行役員の立場で組織運営を行い、ブランドが乏しい中での採用活動の経験をもとに、地方企業・スタートアップ企業の採用支援に伴走します。


