タレントグローススタジオは「キャリアを、翻訳する。」というテーマで、想いが伝わるキャリア支援の人材サービスを行っています。地方人材とスタートアップ企業、スタートアップ人材と地方企業のそれぞれの言葉を翻訳し、想いが伝わる転職活動を支援いたします。
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この記事は「地方人材がスタートアップ求人に応募するときの注意点」について、まとめています。地方企業とスタートアップでは職種の表現が大きく異なるため、その違いを理解することで入社後のミスマッチを防ぐことができます。
職種表現の違いが生む誤解
地方企業で「営業」として働いてきた人がスタートアップの求人を見ると、「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」といった聞き慣れない職種名が並んでいます。
「自分は営業経験があるから、どれにでも応募できるだろう」と考えて応募すると、面接で「求めているスキルと違う」と判断されたり、逆に入社後に「こんな仕事だとは思わなかった」とギャップを感じたりすることがあります。
この問題の原因は、地方企業とスタートアップでは、同じ「営業」という言葉でも指している業務内容が異なることにあります。
スタートアップでは、より効率的な事業運営のため、職務の細分化や専門チーム化が行われているケースが多くあります。そのため、地方企業では一人で担当していた業務が、スタートアップでは複数の職種に分かれていることがあります。
自身の経験や強みを相手の環境に合わせて分解し、入社後の期待業務とのミスマッチが起きないように言語化することが重要です。
営業職の細分化:新規と既存の分業
地方企業では、「営業」という一つの職種で、新規顧客の開拓から既存顧客のフォローまでを一貫して担当することが一般的です。
一方、スタートアップでは営業を複数の職種に分けて、それぞれの専門性を高める形が取られています。代表的なのが「ザモデル」と呼ばれる営業の分業モデルです。
ザモデルでは、営業プロセスを以下のように分業しています。
マーケティング
リード(見込み顧客)の獲得を担当します。Webサイト、広告、セミナー、展示会などを通じて、自社のサービスに興味を持つ見込み顧客を集めます。
インサイドセールス
電話やメール、オンライン商談などを通じて、見込み顧客とのファーストコンタクトを取り、商談の機会を創出する役割です。多くの見込み顧客に効率的にアプローチし、温度感の高い顧客を見極めて次の段階に引き渡します。
フィールドセールス
インサイドセールスから引き継いだ商談を進め、提案・クロージングを行う役割です。顧客のニーズを深く理解し、自社サービスの価値を伝え、契約を獲得することがミッションです。
カスタマーサクセス
契約後の顧客をサポートし、サービスの活用を促進する役割です。顧客が成果を出せるように伴走し、契約の継続や追加契約(アップセル・クロスセル)につなげます。
地方企業で「営業」として働いてきた人は、これらすべての業務を経験している可能性があります。しかし、スタートアップに応募する際は、自分がどの部分に強みを持っているのかを明確にする必要があります。
例えば:
- 新規顧客へのアプローチが得意 → インサイドセールス
- 提案資料の作成や企画提案が得意 → フィールドセールス
- 既存顧客との関係構築が得意 → カスタマーサクセス
このように、自分の経験を分解して伝えることで、スタートアップ側も「この人はうちのどのポジションにマッチするか」を判断しやすくなります。
詳しくは、ローカルグローススタジオの記事「地方企業におけるファネル分解を考える(ザモデルの分業は地方企業でも可能なのか?)」も参考にしてください。
提案の仕方で見える営業スタイルの違い
営業職のもう一つの重要な違いは、提案の仕方です。
地方企業では、定型のサービスや商品をカタログから選んで提案するスタイルが多くあります。価格表があり、顧客のニーズに合わせて既存のプランを提案する形です。
一方、スタートアップでは、顧客ごとに個別の見積もりや企画提案を行うケースが多くなります。顧客の課題を深くヒアリングし、その課題を解決するための独自の提案を設計する必要があります。
この違いは、求められるスキルにも影響します。
定型サービスの販売経験がある場合
商品知識や顧客対応力、クロージング力が評価されます。ただし、スタートアップでは「自分で提案内容を考える力」も求められるため、その点を補う必要があるかもしれません。
企画提案や個別見積もりの経験がある場合
課題発見力や提案設計力が評価されます。スタートアップでは、こうした能力が特に重視される傾向があります。
自分がどちらのスタイルで営業をしてきたのかを明確にし、応募する職種に合わせて強みを伝えることが重要です。
「何でも屋」ポジションの翻訳
地方企業では、「営業事務」「営業企画」「何でも屋」といった形で、複数の業務を横断的に担当するポジションがあります。
例えば:
- 営業活動の傍ら、営業資料の作成や顧客データの管理を担当
- 営業の仕組みづくりや新人教育を担当
- 新規事業の立ち上げに関わる
こうした経験は、スタートアップでは以下のような職種に対応します。
営業企画(セールスイネーブルメント)
営業チームが成果を出しやすくするための仕組みづくりを担当します。営業資料の整備、営業プロセスの設計、新人の教育プログラム作成などが含まれます。
BizOps(ビジネスオペレーション)
事業全体の効率化や仕組み化を担当します。データ分析、業務フローの改善、ツールの導入・運用などを行います。
事業開発
新規事業の立ち上げや、既存事業の新しい展開を企画・実行します。市場調査、事業計画の作成、パートナー開拓などが含まれます。
地方企業で「何でも屋」として働いてきた人は、これらの職種に応募する際、具体的にどんな業務を担当していたのかを分解して伝える必要があります。
例えば:
- 営業資料を作成し、チーム全体で活用できる仕組みを作った → セールスイネーブルメント
- 顧客データを分析し、営業戦略の改善提案を行った → BizOps
- 新しいサービスの企画から営業まで一貫して担当した → 事業開発
このように、自分の経験を具体的な業務単位で分解することで、スタートアップ側も理解しやすくなります。
人事職の細分化
人事職も、地方企業とスタートアップでは表現が異なります。
地方企業では「人事」という一つの部署で、採用・労務・教育・評価などすべてを担当することが一般的です。
スタートアップでは、人事を以下のように細分化しているケースがあります。
人事(採用)/ リクルーター
採用活動に特化した役割です。求人票の作成、候補者のスカウト、面接の調整、オファー交渉などを担当します。
人事(労務)
労務管理や制度運用に特化した役割です。給与計算、勤怠管理、社会保険手続き、就業規則の整備などを担当します。
人事企画 / HRBP
人事制度の設計や組織開発を担当します。評価制度の構築、研修プログラムの企画、組織課題の分析などを行います。また、事業部門に寄り添い、採用計画の立案や人材配置、マネージャー支援などを行うHRBPという職種も注目されています。
地方企業で「人事」として働いてきた人は、自分がどの領域に強みを持っているのかを明確にする必要があります。
例えば:
- 採用活動がメイン → 人事(採用)
- 給与計算や社会保険手続きがメイン → 人事(労務)
- 評価制度の設計や組織づくりに関わった → 人事企画
このように、自分の経験を分解して伝えることで、適切なポジションにマッチしやすくなります。
役職名と実態の違い
役職名も、地方企業とスタートアップでは表現が異なります。
地方企業では「課長」「係長」といった役職名が一般的ですが、スタートアップでは「リーダー」「マネージャー」といった表現が使われます。
ただし、役職名だけでは実態が見えないため、以下の点を明確にする必要があります。
プレイングマネージャーかマネジメント専任か
地方企業では、プレイングマネージャー(自分も実務をしながらチームをまとめる)が多い傾向があります。スタートアップでも同様ですが、規模が大きくなるとマネジメント専任になるケースもあります。
部下の人数
マネジメント経験を伝える際、部下の人数を明確にすることが重要です。
- 1〜5人:小規模チームのリーダー
- 5〜9人:中規模チームのマネージャー
- 10人以上:大規模チームのマネージャー
採用権限・評価権限の有無
管理職としての業務責任を示すため、採用や評価の権限を持っていたかどうかを明確にします。
例えば、職務経歴書では以下のように記載します。
【改善例】
課長として、7名のチームをマネジメント。採用面接・評価・育成を担当し、年間3名の採用を実現しました。
このように、役職名だけでなく、具体的な業務内容と規模を伝えることで、スタートアップ側も正確に評価できます。
なぜこのような違いが生まれるのか
地方企業とスタートアップで職種表現が異なる理由は、事業成長のスピード要求の違いにあります。
営業組織の変遷
かつては大手企業でも、営業職は新規開拓から既存フォロー、提案から契約まで一人で担当する形が一般的でした。しかし、営業活動の科学化や分解が進み、分業化の仕組みが生まれると、そのメリットが明確になってきました。
分業化のメリット:
- 個人の強みを理解し、配置を最適化できる
- チームとしての数値の再現性が改善する
- 業務に専念することで、人材育成の立ち上がりが早くなる
一方で、分業化にはデメリットもあります。業務に専念しすぎることで、全体目線が失われたり、職種を超えたキャリア転換が難しくなるケースも出てきています。
スタートアップが分業化を進める理由
スタートアップでは、投資家に対する上場リターンまでの期限や、赤字投資期間の制約など、成長のための時間制約が厳しく設定されています。そのため、成長スピードが強く求められ、効率的な組織運営のために分業化が進んでいます。
営業プロセスを細かく分解し、それぞれのKPIを設定して改善していくことで、限られた時間の中で最大の成果を出すことが求められるのです。
地方企業が従来型の体制を維持する背景
地方企業は、スタートアップほど成長スピードや規模拡大のプレッシャーにさらされる機会が少ないため、従来の事業体制を維持することが多くなります。
これは、地方企業が「少人数だから」という理由ではなく、事業環境や成長戦略の違いによるものです。安定的な事業運営を重視する場合、分業化よりも一人が複数の業務を担当する形の方が、柔軟性や顧客対応力の面で適している場合もあります。
この傾向は、営業職だけでなく、人事や企画職にも同様に見られます。スタートアップでは採用・労務・人事企画が分かれていますが、地方企業では一人の人事担当者がすべてを担当するのも、こうした背景があるためです。
どちらが良い・悪いではなく、事業のステージ、成長戦略、時間制約によって最適な組織形態が異なるということです。
自分の経験をどう翻訳するか
地方人材がスタートアップ求人に応募する際は、自分の経験を相手の環境に合わせて「翻訳」する必要があります。
ステップ1:自分の経験を分解する
まず、自分がこれまで担当してきた業務を細かく分解します。
例:営業として働いてきた場合
- 新規顧客の開拓(テレアポ、飛び込み、紹介など)
- 既存顧客のフォロー(定期訪問、課題ヒアリング、提案)
- 見積もり作成・契約手続き
- 顧客データの管理
- 営業資料の作成
- 新人の教育
ステップ2:スタートアップの職種に当てはめる
分解した業務を、スタートアップの職種に当てはめます。
- 新規顧客の開拓 → インサイドセールス、フィールドセールス
- 既存顧客のフォロー → カスタマーサクセス
- 営業資料の作成、新人の教育 → セールスイネーブルメント
- 顧客データの管理 → BizOps
ステップ3:強みを明確にする
自分がどの業務に最も強みを持っているのかを明確にします。
例: 「新規顧客の開拓が得意で、月間20社にアプローチし、5社との商談を創出していました」 → インサイドセールスに強みがある
ステップ4:応募する職種を選ぶ
自分の強みに合った職種に応募します。すべての営業職に応募するのではなく、自分の経験が最も活きる職種を選ぶことが重要です。
入社後のミスマッチを防ぐために
職種の違いを理解することは、入社後のミスマッチを防ぐためにも重要です。
例えば、地方企業で「営業」として新規開拓から既存フォローまで一貫して担当していた人が、スタートアップの「カスタマーサクセス」に入社したとします。
カスタマーサクセスは既存顧客の活用支援が中心のため、新規開拓のスキルを活かす機会はほとんどありません。「新規開拓がやりたかったのに」とギャップを感じる可能性があります。
逆に、「インサイドセールス」に入社した場合、新規開拓のスキルは活かせますが、提案からクロージングまで一貫して担当することはできません。「最後まで顧客と関わりたかったのに」とギャップを感じるかもしれません。
このようなミスマッチを防ぐためには、応募する前に、その職種がどんな業務を担当するのかを理解することが重要です。
求人票をよく読み、不明な点があれば面接で質問し、自分の期待する業務内容と一致しているかを確認しましょう。
タレントグローススタジオの「キャリアを翻訳する」サポート
タレントグローススタジオでは、「キャリアを、翻訳する。」というテーマで転職支援サービスを行っています。
地方企業での経験をスタートアップの言葉で表現する方法、自分の強みがどの職種にマッチするのかの整理、職務経歴書の書き方、面接での伝え方など、言語化の支援を行っています。
また、スタートアップ人材が地方企業に転職する際の逆のサポートも行っています。スタートアップでの経験を地方企業に伝わる表現に変えるアドバイスや、地方企業で働く際の文化や常識のギャップの解説などです。
自身の経験や強みを言語化し、相手の環境に合わせて伝わるように翻訳することで、入社後の期待業務とのミスマッチを防ぎ、後悔のないキャリア選択を支援します。
ご関心があれば、お気軽にご相談ください。
タレントグローススタジオを運営する、つなぐスタジオ株式会社では「ビジネス知の機会格差をなくす」というミッションに向けて、これからも実践的で価値ある情報を発信していきます。この記事の内容や、その他キャリア・転職に関して気になる点がありましたら、お気軽にご相談ください。

執筆者 : 佐久間 一己(さくま かずき)
つなぐスタジオ株式会社 代表取締役社長 / ローカル&タレントグローススタジオ Director
リクルート営業マネージャー、ユーザベースFORCAS(現Speeda)カスタマーサクセスマネージャー、スタートアップ役員、地方起業を経て、地方企業向けのマーケティング代理店と採用・キャリア支援事業を設立。人材紹介免許を取得。自身が地方からスタートアップへの転職を経験し、職種の理解や業界の知識を学んだ経験から、双方の立場がわかる存在としてキャリアの支援を行います。また、事業責任者・執行役員の立場で組織運営を行い、ブランドが乏しい中での採用活動の経験をもとに、地方企業・スタートアップ企業の採用支援に伴走します。



